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はじめに
2000年前後の内境界膜剝離の登場および進化(染色など)とともに特発性黄斑円孔の閉鎖率は90%以上の好成績を収めるようになったが,円孔径が500μm以上の大型黄斑円孔や強度近視の黄斑円孔および黄斑円孔網膜剝離では依然としてその円孔閉鎖率は低いものであった。
Inverted internal limiting membrane flap technique(以下,内境界膜翻転法)は,2010年にMichalewskaら1)によって発表された特発性大型黄斑円孔(径>400μm)に対する硝子体手術において用いる技法である。この論文では,内境界膜翻転法を用いることにより大型黄斑円孔の閉鎖率は98%となり(対象とした内境界膜剝離法の閉鎖率は88%),12か月後の術後視力においても内境界膜翻転法は内境界膜剝離法よりも有意に良好な改善を得たことが示されている。特筆すべきことは,その円孔の閉鎖形態で,いわゆるflat-open(網膜色素上皮が露出しているタイプ)な閉鎖は内境界膜翻転法ではわずか2%にとどまり(内境界膜剝離法では19%),ほとんどが円孔底の網膜色素上皮の上に神経網膜の存在を認めた(図1)。
その後,2013年に筆者ら2)が強度近視黄斑円孔および強度近視黄斑円孔網膜剝離に対しての内境界膜翻転法の有効性を報告し(図2),また2014年にはMichalewskaら3)が同様に強度近視黄斑円孔に対する内境界膜翻転法の有効性を報告している。
一方,2014年にImaiら4)は特発性大型黄斑円孔へのインドシアニングリーン(indocyanine green:以下,ICG)染色による内境界膜翻転法により網膜色素上皮細胞の広範な萎縮を認めたことを報告している。
また,内境界膜翻転法と関連した術式として,2013年にShiragaら5)は分層黄斑円孔に対する黄斑前膜翻転法の有効性を報告しており,さらに2014年にはMorizaneら6)が内境界膜剝離を施行済の難治性黄斑円孔に対して自己内境界膜をtransplantする方法の有効性を報告している。Shimadaら7)は強度近視の中心窩分離に対して黄斑部の内境界膜剝離をする一方,中心窩上の内境界膜を残す方法により良好な成績を報告している。
このように内境界膜翻転法およびその亜型法の有効性がさまざまな疾患で確認されてきている一方,その円孔閉鎖機序については不明な点が多く,また,その技法の詳細においてはさまざまであり一定のコンセンサスを得たものはいまだない。
ここではまだ発展途上にあると思われるこの内境界膜翻転法について,現時点で知りうる限りの情報を記載したい。
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