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本書は,「眼科臨床エキスパート」シリーズの角膜疾患編である。本書籍はこれまでの成書として確立された定番の説明だけにとどまらず,最先端の知見・技術を含む基礎知識や臨床応用,トピックスが盛り込まれている。角膜形状解析,PCRなどの遺伝子検査,前眼部OCT,電子顕微鏡,共焦点顕微鏡といった現状でも新たな利用価値や開発が進み続けている機器の解説や実際の所見がふんだんに盛り込まれている,頼もしい一冊である。
なによりも本書に魅力を感じる点は,その読みやすさ(使いやすさ)にあると思う。一般診療でわれわれ臨床医がとる診断・治療の過程のなかで成書や文献は,問診・診察より得られる情報から臨床経験を通して想起される診断・治療の確認や確定診断にむけたさらなる検査,ベストチョイスであろう治療法の選択を確立するための一手段として用いられている。しかし実際には日常診療のなかで素早く診断・治療を決めてゆくためには,ゆるぎない知識が要求されるうえ,必ずしも自分が専門とする疾患を患う患者のみが選択的に自分のもとに来るわけではない。中には典型的な所見を呈する患者だけではなく,専門分野であっても診断がつきにくい疾患もあまたある。このような現状で,多くの成書は疾患について詳細にまとめあげたものが多い。例えば「角膜上皮欠損」→「異物」「CL障害」「アレルギー」「感染症」「薬物障害」などなど多くの原因を想起し診断・治療へと進んでゆくわけだが,鑑別が困難な場合(または治療効果が得られない場合)成書をひも解くのはやや手間がかかる。(もっともこれらを繰り返してゆくことが,医師としての知識につながってゆくのだが―)この点で本書はまとめ方がユニークで他の成書と併用し得る興味ある一冊となっている。われわれ眼科医が診療上最も得られやすい臨床所見,例えば「点状表層角膜症の鑑別」「角膜上皮欠損の鑑別」といったようにまとめあげられているのである。これまで本書のようなまとめ方は,ありそうでなかった。なぜならば,このようなまとめ方を求めると疾患や診断・治療法が大きく重複してしまい複雑かつ膨大になってしまうからである。本書はこの点をきれいに整理し非常に理解しやすくまとめ上げている。また基礎知識,所見,疾患概念,検査を先端技術や治療法を含めて段落ごとに整理されており,大変使いやすい。疾患ごとに整理された大きな成書も一冊必要とは思われるが,本書と併用することによって縦横の知識の網羅ができる外来必携の一冊である。
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