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眼科医になって早20数年,もともと基本的には内臓は健康であるが,整形外科的な問題に長年悩まされ続けていた。大学時代に行っていたスポーツ(バスケットボールとウインドサーフィン)の影響か,あるいは遺伝か(親戚一同腰痛もち),20歳代の頃から腰痛がひどく,年に1~2回は歩くことさえ困難な発作に見舞われてきた。発作が起こるとトイレにも這っていく状態で,すべての予定を1週間ほどキャンセルせざるをえなくなり,不便このうえない。原因検索のため整形外科に相談し,当然画像診断を行っても,腰椎4-5間がやや狭い,というだけで世の中の腰痛もち患者さんの御多分にもれず,「原因不明,対症治療しかない」ということで,発作時は安静,鎮痛薬(座薬がよろしい),湿布の三種の神器でお茶を濁してきた。
約5年前に突然右足の付け根から小指の先までが,激痛としびれで椅子に座っても寝ても苦しい状態が2か月ほど治らず,死にそうな毎日が続いた。本来前向きな性格だけれど,このときばかりは痛みが一生とれないのでは?とものすごく不安になった。どうも坐骨神経痛であることは間違いないようだが,画像上ヘルニアはないので,「梨状筋症候群(坐骨神経が臀部の梨状筋を通るところで圧迫される)」のようだと自己診断した。姿勢が悪いため臀部の筋が緊張して起こるようだ。激痛に三種の神器がまったく効かないため,懇意の整形外科の先生に相談して「神経根ブロック」を数回やってもらって,やっと悪循環から脱出した。神経根ブロックってほんとに怖い……理論的には大丈夫とわかっていても,あの恥ずかしい姿勢と神経に薬が浸透していくいやーな感覚の中で「私って半身不随にならないかしら……」などと邪念が頭をよぎる。人の眼には平気で注射したり切ったりしているのに,他科のことになると俄然,弱気患者になる。
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