やさしい目で きびしい目で・142
未熟児の赤ちゃんからのメッセージ
平岡 美依奈
1
1小金井眼科クリニック
pp.1675
発行日 2011年10月15日
Published Date 2011/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410103882
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私は眼科に入局してから最初の4年間は成人を中心とした診療をしていましたので,医局人事で突然未熟児網膜症を診るように言われた当時は,未熟児に対するイメージがまったく湧きませんでした。そこでいくつかの施設にお邪魔し,先輩方から指導していただきながら試行錯誤で未熟児網膜症の診療を開始したのです。
小さく生まれた子どもたちは,まず呼吸不全,循環不全,感染症など,乗り越えなければならないたくさんの壁に直面します。その後もさまざまな命の危険にさらされながら,生後1か月を過ぎやっと全身状態が安定した頃に初回の眼底検査を行うことになります。ご両親にとっては厳しい状態からやっと安定して,少し気持ちも落ち着いた頃に眼底検査が始まるわけです。未熟児が生まれたとき,多くの母親は自分の抱いていたイメージと実際のお子さんとのギャップから喪失感を感じます。しかし,赤ちゃんは日ごと成長しており,赤ちゃんに対する愛情も日々強くなっていくのです。私は,そんなお母さんに向かって「失明するかもしれない」話をしなければならないわけですが,できるだけその愛情を途切れさせることのないように細心の注意を払います。
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