形態学的検査と技術 血液と病理
わだい
子供の腫瘍
三杉 和章
1
1横浜市大第2病理学
pp.515
発行日 1986年4月15日
Published Date 1986/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543203687
- 有料閲覧
- 文献概要
癌というと普通,成人の病気と考えがちであるが,悪性腫瘍は小児でも主要な死因の一つになっている.小児期で最も頻度の高い悪性腫瘍は急性白血病で,約40%を占める.次が脳腫瘍で,髄芽腫,膠芽腫,神経膠腫などが主である(約20%).さらに,これに関連したものとして目の網膜芽腫がある.胸腹部の腫瘍では神経芽腫,悪性リンパ腫,肝芽腫,腎芽種などが主で,成人に多い胃癌,肺癌などは極めてまれで年長児に少数報告されているにすぎない.良性腫瘍では血管腫,奇形腫が多く,ほかに肝の間葉性過誤腫や腎の先天性mesoblastic nephromaなどが知られている.このように小児の腫瘍はその種類や発生頻度が成人とは非常に異なっているばかりでなく,治療に対する反応でも異なる点が多い.
小児の腫瘍の特徴としては○○芽腫と呼ばれるものが多く,組織学的には胎生期組織に類似する所見,内・外・中胚葉成分の混在,異形成像の共存などが認められることなどで,発生異常との関連が示唆される所見を見ることが多い.実際,特殊な先天奇形の症例に腫瘍の発生が多いことが知られており,片側肥大症や無紅彩症あるいは泌尿器系奇形と腎芽腫,Beckwith-Wiedmann症候群(巨舌症,臍帯ヘルニヤなどの異常を示す巨大児)に副腎皮質癌,肝芽腫や腎芽腫が発生しやすいことなどが有名である.発生学においても分子生物学的な研究が進み,分化・発育に関与する遺伝子の発現の機構がしだいに解明されているようである.小児腫瘍はこれらに発生遺伝子の発現の異常と考えることもできると思われる.
Copyright © 1986, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.