特集 緑内障診療―グレーゾーンを越えて
Ⅰ.診断編
6.疫学調査と遺伝
多治見スタディの総ざらい
岩瀬 愛子
1
1たじみ岩瀬眼科
pp.182-188
発行日 2009年10月30日
Published Date 2009/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410102948
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疫学調査の対象と手法
日本緑内障学会多治見疫学調査(以下,多治見スタディ)1)は,日本緑内障学会が岐阜県多治見市で2000年から2001年にかけて実施した緑内障有病率調査である。日本緑内障学会が岐阜県多治見市に依頼して自治体の事業として展開し,財団法人日本失明予防協会,財団法人日本眼科学会,社団法人日本眼科医会,多治見市医師会の後援を得た眼科医による調査であり,全身疾患の調査に付随してなされたものではない。諸外国の多くの疫学調査は,循環器などの内科疾患の調査とともに,国の政策という強制力をもって調査されていることも多いが,この点で,まず大きく異なる。
実施計画はすべて,日本緑内障学会により試行錯誤のうえ考案され,純粋に緑内障という疾患を知るための研究への協力を市民に呼びかける方法をとった。多治見スタディ実施開始当時,個人情報保護法も制定前であり,厚生労働省などの「疫学調査の指針」もまだない頃であったが,現地事情を踏まえながら日本緑内障学会はこの計画実施のために,疫学調査委員会(とくに中心となったのは実行小委員会)を立ち上げて(表1),独自の倫理にかなった方法を考案し,この基準は,結果的には現在の疫学調査指針や個人情報保護法にも則ったものとなった。
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