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はじめに
日本における大規模な緑内障疫学調査は,1988年にShioseら1)が日本全国,北は北海道から南は熊本までの7か所で同時に行っている。この結果,正常眼圧緑内障の有病率がこれまでの国際的な報告に比べ高頻度であることが明らかにされた。わが国における緑内障の特徴,病型や有病率について報告された最初の疫学調査であった。次に,2000年に多治見市でIwaseら2)による大規模な緑内障疫学調査が行われた。その結果,日本人の特徴として開放隅角緑内障の有病率がアジア系人種としてはきわめて高いこと,またShioseらの報告をさらに上回る正常眼圧緑内障の有病率も明らかにされた。
多治見スタディにおける緑内障の判定は1998年にInternational Society of Geographycal and Epidemiological Organization(ISGEO)によって示された診断基準(表1)に準拠して行われた。Shioseらの疫学調査では,閉塞隅角緑内障に関しては北海道では高有病率であり,一方熊本では低有病率であり明らかな地域差が示された。この際の閉塞隅角緑内障の診断基準は眼圧が21mmHgを超えること,隅角は閉塞ないしほぼ閉塞に近い状態であることが求められ,かなり厳しい診断基準であった。閉塞隅角緑内障の診断にはその後ISGEO,Fosterら3)の隅角鏡所見からいわゆる閉塞隅角眼(表2)であること,それに緑内障性視神経症(GON)を伴っていることが求められ,この診断基準に準じて多治見スタディでは閉塞隅角緑内障が診断されている。
久米島スタディは日本緑内障学会データ解析委員会の6番目のプロジェクトとして企画,承認され,多治見スタディと同様の診断基準による緑内障の病型,有病率を決定し,多治見スタディとの比較により緑内障の病型や有病率の地域差を明らかにし,さらに国際的なこれまでの報告と比較検討することを目的とした。
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