Japanese
English
特集 糖尿病の眼合併症
糖尿病関連視神経症
Diabetes-associated optic neuropathy
中村 誠
1
Makoto Nakamura
1
1神戸大学大学院医学系研究科外科系講座眼科学分野
pp.1836-1841
発行日 2008年11月15日
Published Date 2008/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410102535
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はじめに
糖尿病の眼合併症は,高血糖ないしその他の代謝障害によって引き起こされる毛細血管症であるとまとめられている。その代表選手が糖尿病網膜症である。神経組織は透明であるため,臨床の現場でわれわれが目にすることができるのは血管成分がほとんどであり,またヒトでは,激しい増殖性変化をきたすために,血管症に注目が集まるのは仕方のないところである。しかしながら,網膜組織の実質のほとんどを構成するのは,神経細胞である。電気生理学的ないし心理物理学的検査や,近年の画像解析を用いた研究によれば,血管症の発症前後には,網膜神経の機能的・構造的障害が起きていることが示されるようになった。また,細胞生物学的な基礎研究の場においては,糖尿病網膜では神経細胞のアポトーシスやグリア細胞の活動性の変化が生じていることが明らかとなってきた(図1)。
発症のメカニズムに関する知見の集積が進む一方,臨床的には,高齢者の中途失明原因のトップを占める虚血性視神経症と糖尿病との関連は重要な研究課題である。また,視機能障害が軽度な糖尿病乳頭症についても理解を深める必要がある。
本稿では,こうした現状を踏まえ,基礎編として糖尿病における網膜神経障害の起こるメカニズムについて,臨床編として虚血性視神経症と糖尿病乳頭症の病態について,解説したい。
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