コラム 私のこだわり
強膜バックリング手術
竹内 忍
1,2
1竹内眼科クリニック
2東邦大学
pp.165
発行日 2008年10月30日
Published Date 2008/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410102478
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硝子体の裂孔部への剝離力は,硝子体の癒着範囲と牽引力に関係するが,周辺部網膜で広範囲に網膜硝子体癒着がある例では,硝子体単独手術では網膜復位が得られないことになる。すなわち,いくら硝子体手術といっても網膜硝子体癒着のある部分の硝子体を完全に切除するのは難しく,まして網膜が剝離した状態では人工的に硝子体剝離を作製するのは至難の技である。したがって,硝子体単独手術では,術直後に網膜復位を確信することができない例が多く存在する。そのような場合,確実な網膜復位のためには硝子体の牽引を相殺し,裂孔をも閉鎖する強膜バックリングが有用である。
さて,最近では裂孔原性網膜剝離例に硝子体手術を第一選択とする術者が増えているが,手技の容易さと一定程度の高い復位率が得られることより,ある面では当然のことである。一方,その結果であろうか,強膜バックリング手術ができない,ないしは下手な術者が出てきている。バックリング手術に自信がないため,硝子体手術ですべての症例を治療しようとする術者も現れ,若年者で調節力のある透明な水晶体を除去し,眼内レンズを挿入した手術を行っている。その挙句に増殖性硝子体網膜症になって多数回手術が行われ,シリコーンオイル注入眼となってしまう例も少なくない。
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