コラム 私のこだわり
双眼倒像鏡
中澤 満
1
1弘前大学
pp.31
発行日 2008年10月30日
Published Date 2008/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410102452
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いまとなってみれば自分自身にとっては至極当然のことであるが,若い眼科医にとってはまだ非常識的なことのようであるので,この機会に双眼倒像鏡での診察の有用性について述べてみたい。
私がまだ2年目の眼科研修医の頃,大学から非常勤で他の病院へ出張に出かけるにあたって,先輩から「未熟児網膜症だけは見逃さないように」との指導を受けた。未熟児網膜症では網膜血管が鋸状縁まで何乳頭径の部位まで伸展したかが問われるので,当然その部位まで見えなくてはならず,眼球を圧迫して観察せざるを得ない。使い慣れた単眼検眼鏡では両手がふさがるので眼球圧迫ができず,したがって最周辺部までは見えず,さらに新生児でも結構眼球運動が激しいこともあり,自信をもって判断することができない。先輩から「普段から双眼倒像鏡で眼底をみておくとよい」と言われるが,日常外来診療では外来患者の人数の多さにいちいち双眼倒像鏡を着脱しながらでは面倒であり,ついつい単眼倒像鏡に頼ってしまう。そしてそれで困るのは未熟児網膜症の診察となるのである。
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