コラム 私のこだわり
「正しく診る」
三宅 養三
1
1愛知淑徳大学
pp.86
発行日 2008年10月30日
Published Date 2008/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410102461
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いまから30年ほど前になるが,筆者はボストンに留学していた。恩師の一人であるCharles Schepens先生は当時63歳くらいの年齢であったが,まだ熱心に診療,手術をこなしておられた。いまから振り返ってみてもSchepens先生の臨床における価値観の大きなものの1つは,「正しく診る」ということではなかったかと思う。双眼倒像鏡(スケペンスコープ),強膜圧迫子,走査レーザー検眼鏡などの開発はこの価値観の産物である。
彼はスケペンスコープと強膜圧迫子を用いて,眼底を周辺部までていねいに時間をかけて観察するのを常としていた。強膜圧迫子で眼瞼の上から強膜を適当に圧迫しながら眼底を観察するのだが,なぜか患者は痛みを訴えなかった。人はこの検査を触診と呼んでいた。ほんの少しの強膜圧迫による網膜の挙上により,動的に病態を評価するのである。また細隙灯顕微鏡を用いての硝子体の観察も随分時間をかけて行い,この検査を非常に重要視していた。福島県立医科大学から高橋正孝先生が梶浦レンズという福島医大オリジナルの特殊兵器を持参してボストンで硝子体の微細観察を行っていたとき,Schepens先生のこの方法への高い評価は半端なものではなかった。
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