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連載 公開講座・炎症性眼疾患の診療・10
春季カタル
Vernal keratoconjunctivitis
合田 千穂
1
,
北市 伸義
1
,
大野 重昭
1
Chiho Goda
1
,
Nobuyoshi Kitaichi
1
,
Shigeaki Ohno
1
1北海道大学大学院医学研究科病態制御学専攻感覚器病学講座眼科学分野
pp.22-25
発行日 2008年1月15日
Published Date 2008/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410102104
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はじめに
カタル(catarrh)とは,ギリシャ語の「下に」を意味するcata-と「流れる」を表すreoに由来するとされる。古代ギリシャ医学では脳には粘液がたまっており,それが過剰になると下に流れ出すと考えられた。さらにカタルには目,鼻,耳,肺,腹,筋肉,関節の7つの流れがあるとされた。つまり「カタル」は分泌物が多い病態を表す。現在も眼のほかに鼻カタル,中耳カタル,気管支カタル,胃(腸)カタル,咽頭カタルなどの用語が用いられている。
春季カタル(vernal keratoconjunctivitis:VKC)はアレルギー性結膜疾患の1つで,10歳以下の男児に多くみられる。アレルギー結膜疾患診療ガイドラインでは,結膜に増殖性変化がみられるアレルギー性結膜疾患と定義される1)。結膜の増殖変化とは眼瞼結膜の乳頭増殖,増大あるいは輪部結膜の腫脹や堤防状隆起をさす。眼瞼の乳頭増殖は石垣状乳頭増殖と表現される。疾患名にある「春季」の由来は春から夏にかけて症状が悪化する患者が多いためで,世界的には温帯気候,特に地中海地域に患者数,重症例がともに多い2)。
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