特集 眼科専門医に必要な「全身疾患と眼」のすべて
9.結合組織病および近縁疾患
結節性動脈周囲炎,大動脈炎症候群,側頭動脈炎
伊藤 忠
1
1弘前大学医学部眼科学教室
pp.176-178
発行日 2007年10月30日
Published Date 2007/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410102019
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結節性動脈周囲炎
1.概念
結節性動脈周囲炎(periarteritis nodosa:PN)は中・小型の筋型動脈に壊死性血管炎を生じ,その結果,動脈壁に瘤(動脈瘤)を形成し炎症が生じる疾患で,全身の諸臓器に分布する血管に動脈炎を生じることから,多彩な症状を呈する疾患である1)。肉眼的に壊死性血管炎が認められる症例を古典的多発動脈炎(classical polyarteritis nodosa:classical PN),顕微鏡で壊死性血管炎が認められる症例を顕微鏡的多発血管炎(microscopic polyangitis:MPA)と呼ぶ2)。古典的多発動脈炎と顕微鏡的多発血管炎は障害される血管径が異なることから,臨床症状に差異を認める。また,顕微鏡的多発血管炎では好中球の細胞質に対する抗体(抗好中球細胞質抗体antineutrophil cytoplasmic antibody:ANCA)のなかの一種であるミエロベルオキシダーゼ(myeloperoxidase:MPO)に対する抗体(抗MPO抗体:MPO-ANCA)が高率に陽性を示すことがわかっている3)。
全国の年間症例数は古典的多発動脈炎で60~100人,顕微鏡的多発血管炎で1,400人で,罹患男女比はやや男性に多く,両疾患とも60歳以上に多くみられる(免疫疾患調査研究班)。
古典的多発動脈炎では肝炎ウィルスや他のウィルス感染症が関与して発症する症例が存在するが,他の多くの症例では原因不明なことが多い。顕微鏡的多発血管炎ではMPO-ANCAが発症に関与している。両疾患とも遺伝性は認められていない。
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