特集 眼科専門医に必要な「全身疾患と眼」のすべて
3.代謝異常
アミノ酸代謝異常とその他の疾患
中村 誠
1
1名古屋大学大学院医学研究科頭頸部・感覚器外科学講座(眼科学)
pp.53-57
発行日 2007年10月30日
Published Date 2007/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410101990
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はじめに
先天アミノ酸代謝異常は,生体内でアミノ酸が吸収されて,代謝,排出される過程のどこかに障害があるために,アミノ酸の過剰あるいは欠乏が生じて発症する疾患である。主に遺伝的原因によって起こり,通常全身症状を伴う。わが国では,フェニルケトン尿症,メープルシロップ尿症,ホモシスチン尿症,ガラクトース血症に対して新生児マス・スクリーニングが実施され,早期発見,早期治療が施行されている1)。
眼症状を伴う先天アミノ酸代謝異常の疾患には,ホモシスチン尿症(水晶体偏位),高オルニチン血症(脳回転状脈絡網膜萎縮症),フェニルケトン尿症(白内障),シスチン症(角結膜結晶沈着),チロシン血症Ⅱ(角膜潰瘍),晩発性シトルリン血症(乳頭浮腫),高グリシン血症(眼振),メープルシロップ尿症(視神経萎縮)などが知られている。眼症状から疾患が見つかることもあるため,これらの眼症状がみられるときは,先天アミノ酸代謝異常の可能性も考慮して他科の専門医にも相談する必要がある場合がある。本項では眼症状を伴う代表疾患としてホモシスチン尿症,高オルニチン血症,フェニルケトン尿症,シスチン症について解説する。
Marfan症候群とLowe症候群(眼脳腎症候群)は先天アミノ酸代謝異常の疾患ではないが,Marfan症候群はホモシスチン尿症とよく似た外観を呈し,Lowe症候群はシスチン症同様尿細管性アシドーシスをきたすことなど,先天アミノ酸代謝異常の疾患に類似した臨床症状を伴うため,本項で取り上げる。
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