特集 眼科専門医に必要な「全身疾患と眼」のすべてコラム
眼科研究こぼれ話
眼腫瘍とミシガン大学
児玉 達夫
1
1島根大学
pp.30-31
発行日 2007年10月30日
Published Date 2007/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410101985
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「ヒト胃癌細胞株における癌胎児性抗原の細胞膜表現に及ぼすmonensinとtunicamycinの効果」,これが私の学位論文です。眼科とはまったく関係がないようですが,現在の臨床研究に役立っています。新設医大の4期生として入局した当時,眼科研究室といっても自前で学位論文を指導できるほど整備はされていませんでした。眼科の大学院生たちは病理,生理,解剖,微生物学などの基礎医学教室へ赴き,研究をまとめて眼科へ帰ってくるのでした。しかしながら眼科復帰後は臨床一辺倒となり,それらの貴重な研究は残念なことに「学位のための研究」に終わることが多かったようです。
私の場合,初代の瀬戸川朝一教授から病理組織学を学んでくるように言われ,第一病理学の故森川茂教授の門をくぐりました。森川教授は赤血球と免疫グロブリンの抗原抗体反応で有名なCoombsに師事され,研究室には教授が樹立された造血系,消化器系悪性腫瘍を中心とした培養細胞が100株以上継代されていました。研究室を訪れた初日に胃癌細胞を用いた免疫染色を指導され,黄緑色に輝く蛍光像をみている自分を初めて科学者のように感じました。眼科領域の細胞を扱うことはありませんでしたが,すべての実験において「癌細胞と闘っている」という漠然とした高揚感に駆られ,興味が尽きることはありませんでした。
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