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はじめに
前回の連載では主としてカウンセリングを行う環境について解説した。主として物理的環境がクライエントにどのような影響を与えるかを考えることが,カウンセリングの理解に役立つと考えたからである。今回は実際にカウンセリングを進めていく一般的な方法と,カウンセラーが注意を払わねばならない態度・スキルについて紹介したい。行動療法とか認知療法といった,心理職が行う専門的な技法の解説ではなく,遺伝カウンセリングで応用できる一般的なスキルが中心である。
ここで改めて復習をしておこう。ロジャースのカウンセリングでは,カウンセラーとクライエント間の好ましい人間関係(ラポール,リレーション)を前提に対話を繰り返し,クライエントがカウンセラーから影響を受けながら自律的な決断による行動変容に向かうことを目標にしている。カウンセラーは行動変容の方向について強制はしないが,医療カウンセリングであるから「好ましい」方向に上手に誘導しなくてはならない。この一連の過程で用いられるのがカウンセリング・スキルと呼ばれるものである。
ロジャース派のカウンセリングの指導者である國分によるとカウンセリングを進めるうえでの基本的な態度やスキルとして,受容・支持・繰り返し・明確化・質問の5項目を強調している(「カウンセリングの技法」,誠心書房)。これらはカウンセリングでは基本技術であるが,医療カウンセリングとしての側面が強い遺伝カウンセリングにおいては,動機付け,受容,支持,情報提供と教育,確認,勇気付け,自律的な決断と行動変容の誘導,習慣化(フォロー)といった基本的な流れに沿ったほうがわかりやすいだろう。國分による「繰り返し」,「明確化」,「質問」などのカウンセリング・テクニックはこれらの過程の随所で必要となる技術である。
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