Japanese
English
特集 緑内障治療の副作用・合併症対策総ざらい
濾過手術
Glaucoma filtration surgery
大鳥 安正
1
Yasumasa Otori
1
1国立病院機構大阪医療センター眼科
pp.160-168
発行日 2016年2月15日
Published Date 2016/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410211697
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はじめに
濾過手術の代表である線維柱帯切除術(以下,トラベクレクトミー)は1961年にSugarが半層強膜弁下に瘻孔を作製する術式を報告したことに始まる。その当時,房水はSchlemm管や血管に吸収されて眼圧が下降すると考えられていた。1968年にCairnsによってトラベクレクトミーの奏効機序は結膜下に房水が濾過されていることが報告され,その後1983年ChenによるマイトマイシンCの併用,1984年Heuerによる5-フルオロウラシルの併用によって濾過機能が持続するようになった。その後もトラベクレクトミーは多数の改良を経て緑内障手術のゴールドスタンダードとなった1)。
血管新生緑内障や正常眼圧緑内障を除いた日本人でのマイトマイシンCを併用したトラベクレクトミーでは,眼圧が5〜15mmHgになるのは,1年後で78%,5年後で50%であり,偽水晶体眼,術前高眼圧,3回以上の濾過手術既往は術後成績が悪く,術後のneedlingや白内障手術も術後成績に影響すると報告されている2)。術後早期合併症には,脈絡膜剝離,浅前房,前房出血があり,術後1か月以降の合併症には,低眼圧黄斑症,濾過胞感染がある。術前の状態,術後早期および晩期に起こる合併症にいかに対処するかがトラベクレクトミーの術後成績に影響する。本稿では,トラベクレクトミーでの合併症とその対策について解説する。
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