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はじめに
遠隔医療とは,「医療情報(患者の状態・カルテ・病理標本・診療用画像など)を電子的に転送して,遠隔地から診断・指示などの医療行為及び医療に関連した行為を行うこと」(厚生省遠隔医療研究班「総括班最終報告書」1997年3月)である。従来から行われてきた電話や手紙など言葉や文書のみの医療相談は含まれない。遠隔医療の概念には,在宅医療支援・在宅介護なども対象となっており,医師以外に歯科医師や看護師,検査技師,薬剤師などもその範疇に加わることがありうる。遠隔医療の主な目的は,IT技術拡充を背景に,へき地医療の充実や専門医への紹介を効率的に行い,医療の地域格差を解消することである。法的にも徐々に整備されつつあり,遠隔医療のうちで遠隔画像診断および遠隔病理診断は,対面診療を規定する医師法20条に抵触しないことが厚生省通達で再確認された(健政発第1075号:1997年12月24日)。しかし診断できる施設は,臨床研修指定病院とへき地中核病院などに限定されている。
本項では,遠隔医療のうち,眼科における遠隔診断について紹介するが,残念ながら現在のところ放射線画像診断と病理診断のみが保険点数の算定を,術中迅速病理診断が遠隔診断加算を許されているのみであり,眼科遠隔医療に関しては患者に接する眼科医が介在する必要がある。平成16年度に公的機関によって運営されている眼科遠隔医療プロジェクトは旭川医科大学の取組みを含めて10件(「平成15年度厚生労働省科学研究費補助金医療技術評価総合研究事業 遠隔医療実施状況の実態調査に関する研究」2004年3月)になっており,法のさらなる整備と画像送信プロトコールが標準化されれば,今後の眼科診療の一部を形成する分野となる可能性が高い。遠隔医療の目的もさまざまであり,専門外医師への救急処置のアドバイス1),糖尿病網膜症のマス・スクリーニング2),患者紹介や診断補助3,4)などが報告されている。
福島県立医科大学においては,へき地医療の充実は急務であり,今回ニデック社とともにNidek Vision Network(以下:NVN)を共同開発し,福島県内の6つの基幹病院に診断補助のために導入した。本項ではNVNの操作性について述べる。
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