特集 眼科における最新医工学
III.治療への応用
眼科用生体材料序論
筏 義人
1
1鈴鹿医療科学大学医用工学部
pp.216-219
発行日 2005年10月30日
Published Date 2005/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410100216
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はじめに
細胞と接触して用いる医療材料を生体材料という。コンタクトレンズは典型的な生体材料であるが,同じ目的で用いる眼鏡は生体材料ではない。英語では,生体材料をバイオマテリアル(biomaterial)と呼ぶ。再生コラーゲンとか治療用羊膜のような生体由来材料も生体材料の一種である。
眼科領域においても生体材料はこれまでに多く用いられ,これからも多く用いられようとしている。この領域においてこれまでに最も多く用いられたのはコンタクトレンズであり,これから用いられようとしているのは再生医療分野である。コンタクトレンズ材料の研究はほぼ完成の域に達しているが,残された問題も少なくない。人工角膜,人工水晶体(IOL),人工硝子体,人工網膜などの人工臓器あるいは組織に対しても,他の人工臓器と同じように活発な研究が進められてきた。
ところが,興味あることに,心臓血管外科,整形外科,口腔外科などにおける人工臓器(組織)と比較して,眼科領域においては,上記の4つのうち,IOLを除けば,いずれもまだ実用化のレベルに達していない。その理由を以下に述べる。ただし,人工角膜と人工硝子体は別項で詳しく述べられるため,それらの各論には立ち入らず,もっと広い視点から生体材料の問題点について考える。
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