特集 OCTによる緑内障診療アップデート
序論
福地 健郎
1
1新潟大学大学院医歯学総合研究科眼科学分野
pp.1159-1160
発行日 2023年10月5日
Published Date 2023/10/5
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000003351
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OCT(光干渉断層計)が緑内障診療の現場で必須の検査装置となって久しい。なかでもOCTによる黄斑部解析が可能になったことは,ひとつの画期的な転換点である。それまでの一般的な認識を大きく覆し,緑内障による視神経障害は,しばしばより早期からより中心窩に近い領域で生じていることが明らかとなった。このことは私たちの緑内障診断と管理の考え方を一変させた。たとえば,中心30°内視野測定で視野欠損を検出しない前視野緑内障の段階で,既に中心窩付近の視神経障害は発症しており,中心10°内視野測定によって視野異常を検出できる症例にしばしば遭遇する。緑内障性黄斑部障害は患者のQOLにとって重要で,手術適応など治療方針決定にも関わる。さらに,OCT angiographyはOCTを用いた新手の応用的テクノロジーで,その開発のコンセプトには驚いた。現状で,緑内障に関するOCT angiography観察は,研究的な位置づけが大きいが,血管,血流といったこれまでに観察することのできなかった側面から緑内障性視神経症の病態理解が深まったという意味で重要である。さらに,前眼部に特化したOCTは機種としてまだ限定され,十分に普及しているとはいえない。しかし,原発閉塞隅角病の診断や治療を中心に,緑内障臨床における重要性,必需性はますます増してきている。
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