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はじめに
アレルギー性結膜炎の治療には,現在ヒスタミンH1ブロッカー,マスト細胞スタビライザーに加え,ステロイド剤が利用可能である。重症の結膜炎の場合,ステロイドの局所使用に加え,全身投与が必要となることも多い。とくに春季カタルにおいては発症好発年齢が若年者であり,年余にわたってベタメタゾン点眼治療を行うと眼圧上昇をきたす症例も多く,このなかの一部は続発緑内障へと移行してしまう。おそらく,SNP(single nucleotide polymorphism)など遺伝的な要因によると考えられるが,現在のところこのような症例を見分ける方法は残念ながらまだない。
最近,アレルギー性結膜炎とT細胞の関連もクローズアップされてきており,T細胞を主たる標的とした免疫抑制薬が治療に用いられるようになってきた。現在認可申請中あるいは臨床治験中であるのはシクロスポリン点眼液とFK-506点眼液であり,いずれも細胞内シグナリングカスケードにおけるプロテインホスファターゼであるカルシニューリンを競合的に阻害する薬剤である。シクロスポリン点眼液は,現在著明な副作用は報告されていないが,その薬効はベタメタゾンに比べると弱い。FK-506はその低いIC50値から予想されるように点眼による春季カタル症例への治療効果は強力であるが,点眼時に強い刺激性(灼熱感)がある。また,皮膚科領域も含め,使用によるヘルペス再発の懸念が報告されている。
さて,臨床上,春季カタルをはじめとする重症アレルギー性結膜炎の発症メカニズムは想像以上に複雑である。このため,新しい機序に基づくような薬剤が利用可能になれば,患者にとってより満足度の高い治療法の開発につながるのではないかと考えている。本稿では,アレルギーに特徴的な好酸球を誘導するサイトカイン,eotaxin-1のレセプターアンタゴニストの抗アレルギー薬としての可能性について紹介したい。
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