連載 婦人科腫瘍切除標本の取り扱い方・12
子宮内膜症切除標本の取り扱い方
板持 広明
1
,
紀川 純三
1
,
寺川 直樹
1
1鳥取大学医学部産科婦人科学教室
pp.195-199
発行日 2002年2月10日
Published Date 2002/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409905066
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はじめに
子宮内膜症は子宮内膜あるいはその類似組織が異所性に存在,機能する疾患であり,子宮内膜症取扱い規約では,子宮筋層内に発育するものは子宮腺筋症として別の概念としてとらえている.
本症は生殖年齢婦人の10%に発症する極めて頻度の高い疾患である一方,類腫瘍病変である本症はprotooncogeneの変化に伴い前癌病変としての性格を持ち,染色体の不安定化,癌抑制遺伝子の変異などを経て癌化へと進む可能性が示唆される.また,類内膜腺癌や明細胞腺癌など本症より発生する癌の存在も知られている.したがって,本症に対する組織診断は重要である.取扱い規約では,本症の診断に際して肉眼的所見と組織診断との併用が重要であり,腹腔鏡検査か開腹に依るべきであるとしている.しかしながら,現病歴,内診,画像診断,生化学的検査などの臨床所見のみで診断されている症例も少なくない.また,内膜症病変に関する理解も十分とは言い難い.子宮内膜症の病理学的特徴を理解し,正しい切除標本の取り扱いを行うことは産婦人科医にとって必要である.
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