今月の臨床 産婦人科と糖尿病—基礎知識と実地臨床
妊娠と耐糖能異常
7.妊娠中のインスリン療法
和栗 雅子
1
1大阪府立母子保健総合医療センター母性内科
pp.162-165
発行日 2002年2月10日
Published Date 2002/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409905057
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はじめに
耐糖能異常妊婦の妊娠を成功させる,つまり母児の周産期合併症を防ぐための最大の管理目標は,妊娠初期から血糖を正常化し,それを維持することである.そのためには,厳格な血糖コントロールが必要であり,これまで食事療法のみでコントロール可能であった2型糖尿病合併妊婦でも,妊娠中に初めて発症した妊娠糖尿病でも,インスリン療法を導入することもある.妊娠前よりインスリンを使用している場合,特に1型糖尿病合併妊婦では,妊娠初期には悪阻や胎児側へのブドウ糖輸送の開始などにより低血糖を起こしやすく,中期以降は胎盤由来のインスリン拮抗ホルモンの分泌や胎盤でのインスリンの分解によるインスリン必要量の増加と胎児のエネルギー需要・母体膵β細胞のインスリン分泌能の増大,母体の摂食量・運動量の変化が複雑に関与するため,血糖値は非常に変動しやすいので,さらに厳格かつ慎重なインスリン投与が必要である.
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