今月の臨床 産婦人科と糖尿病—基礎知識と実地臨床
妊娠と耐糖能異常
8.糖尿病腎症合併妊娠
平松 祐司
1
1岡山大学大学院医歯学総合研究科病態制御学専攻 産科・婦人科学教室
pp.167-171
発行日 2002年2月10日
Published Date 2002/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409905058
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はじめに
わが国においても糖尿病人口は急激に増加傾向にある.糖尿病腎症(以下,腎症)は1型糖尿病の30〜40%,2型糖尿病の約50%に合併し,腎症の5〜10%に妊娠が合併する1).また,注目すべきは1998年に透析導入原疾患として長年第1位を占めていた慢性糸球体腎炎にかわり糖尿病がトップになったことである.そして,1999年にはわが国で新たに慢性血液透析に導入された30,438人のうち,糖尿病腎症による導入は11,009人(36.2%)を占めている2).
糖尿病には多くの合併症があるが,妊婦に腎症が合併すると,死産,胎児奇形,妊娠中毒症,胎児発育遅延,早産などを引き起こし,胎児予後に直接影響を及ぼすため最も重要な合併症と考えられる.また,母体においては妊娠中,分娩後の腎機能の変化も大きな問題となる.腎機能が悪化し腎不全となれば,大血管障害,特に心筋梗塞や心不全を併発し死亡率は10倍に上昇し3,4),生命予後にも関係するため,その取り扱いは非常に重要である.
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