特集 Safe motherhood—リスクファクターの再評価
妊娠中毒症の発症予防対策
佐藤 和雄
1
,
三宅 良明
1
,
坂田 寿衛
1
Kazuo Sato
1
1日本大学医学部産科婦人科学教室
pp.741-748
発行日 1990年9月10日
Published Date 1990/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409904875
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妊娠中毒症は母体合併疾患の中で最も重要な疾患の一つであるにもかかわらず,未だその病態,成因について確定的なものがないため,その根本的な予防対策については現在研究が進められている段階である。従来,疫学的調査に基づいた予防や安静,食事療法(減塩),予防的利尿剤の投与と可及的な早期診断と厳重な母児管理による病態の増悪防止を主体とした二次的予防対策にとどまっている。しかし,妊娠中毒症は母体が胎児,胎盤を内蔵することによって,fetal allograftと母体組織間で適応不全が生じ,その後の妊娠経過中に母体循環血流量や心拍出量の減少や末梢血管抵抗,血管感受性の増大,さらには血液凝固系の異常を,また胎児には子宮胎盤血流量の減少,胎盤機能不全や子宮内胎児発育遅延を惹起する適応不全疾患(Maladaptation Disease)であることに間違いはなく,最近,その主要因の1つとして全身および胎盤におけるプロスタグランディン産生の不均衡が注目され,その是正策が予防に結び付けられつつある。また,疫学的調査から高カルシウム食を摂取する人種ではeclampsiaの発生が少ないことより,大量カルシウムの経口投与による血管感受性の低下作用,降圧作用も検討されつつある。そこで今回は従来の予防対策とその問題点,プロスタグランディン産生不均衡是正策としての低用量アスピリン療法,カルシウム大量投与について述べる。
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