新しい視点をさぐる リプロダクションと母体適応
妊娠中毒症と母体適応
坂元 正一
1
,
佐藤 和雄
1
,
中林 正雄
1
,
金子 義晴
1
,
陳 信夫
1
Shoichi Sakamoto
1
1東京大学医学部産科婦人科学教室
pp.585-591
発行日 1978年8月10日
Published Date 1978/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409205877
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妊娠中毒症は,妊娠後期に起こる高血圧,蛋白尿,浮腫をtriasとする症候群である。その成因については,昔から幾多の学説が発表され"学説の疾患"とさえいわれてきた。しかしその本態については不明のままである。これまで発表された学説の主なものは,胎盤で産生される特殊な物質を原因とする説,副腎皮質ホルモン説,下垂体・間脳失調説,昇圧物質説(catecholamineなど),血液凝固障害説(DIC)などがある。このように多くの学説で説明されようとしたくらいに妊娠中毒症は複雑多岐にわたる病態を示すもので,そのような病態に母体がいかに適応し妊娠を維持継続してゆくのかを論ずることはきわめてむつかしいことのように思われる。
妊娠中毒症に限らず,疾患に対する適応という内容を,一つは疾患の発症によって起こった症状が,その疾患に起因する障害の代償的機能の発動によって現われてきた適応現象の発現型であるとする見方と,他はある疾患の症状は,その疾患そのものによる障害の一発現型で,それに対して個体はどのような修復機能を働かせ,その症状を消失させるように適応しているかとの見方と二通り考えられると思う。そこでこのような考え方を妊娠中毒症の症状である高血圧と蛋白尿にあてはめ,それらに対する母体適応について論じてみたい。
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