特集 婦人科癌発症のNatural history
子宮頸癌
吉川 裕之
1
,
水野 正彦
1
Hiroyuki Yoshikawa
1
,
Masahiko Mizuno
1
1東京大学医学部産科婦人科学教室
pp.203-207
発行日 1990年3月10日
Published Date 1990/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409904830
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)の発癌性は子宮頸癌との関連でとくに注目されるようになった。子宮頸癌の原因としてHPVが研究されるようになった理由は,第1にHPVは性行為感染症である尖圭コンジローマの起因子であり,子宮頸癌が性行為と関連が深いという疫学的事実に一致すること,第2に,HPVは造腫瘍性が証明されているウサギやウシのパピローマウイルスと同属のウイルスであり,その造腫瘍性が充分疑われることであった。尖圭コンジローマの起因子であるHPV−6やHPV—11は,結果的には子宮頸癌にはほとんど存在しないことがわかったがこの検索の過程でHPV−16やHPV−18が発見され,これらは子宮頸癌に高率に検出されることがわかってきた。現在の研究の焦点は,遺伝子レベルでの発癌機講の解明と感染自体の自然史の解明であり,癌ウイルスの研究が癌の予防に進展することがもっとも期待される分野となってきた。
Copyright © 1990, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.