指標
子宮頸癌・外陰癌のヒトパピローマウイルスとの関連—特に分子生物学的アプローチについて
吉川 裕之
1
,
川名 尚
1
,
水野 正彦
1
,
坂元 正一
1,2
Hiroyuki Yoshikawa
1
,
Shoichi Sakamoto
1,2
1東京大学医学部産科婦人科学教室
2東京女子医科大学母子総合医療センター
pp.295-301
発行日 1985年5月10日
Published Date 1985/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409207166
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子宮頸癌・外陰癌は,多くの疫学的事実により,性行為で伝達される因子との関連が示唆されている。その因子の1つとして,最近ヒトパピローマウイルス(Humanpapillomavirus,HPV)が注目されるようになった。HPVは造腫瘍性が証明されているShope papilloma—virusやbovine papillomavirusと同属のウイルスであり,また性行為感染症(STD)の1つで,癌化の報告も多い尖圭コンジローマの起因了と考えられているからである。しかしHPVに感受性の培養細胞が得られないためにウイルスを採取することができず,臨床的にも子宮頸部ではHPV感染が稀と考えられていたなどのために,子宮頸癌・外陰癌の発癌に関したHPVの研究はほとんどなされていなかった。
培養系を用いた従来のウイルス学的手段の確立は未だ成功していないものの,近年確立された分子生物学的手法は新しい研究の方向性を打ち出した。すなわち,1980年Gissmannらが尖圭コンジローマよりHPV6型DNAを抽出し1),翌年にはそのクローニングにも成功して2)以来,婦人科領域でもいくつかのHPV DNAが発見され,これらをプローブとしたDNAハイブリッド法によって,HPVと子宮頸癌・外陰癌との関連を分子生物学的に研究することが可能となったのである。
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