今月の臨床 不妊診療のピットフォール
治療のピットフォール
6.体外受精への移行時期
柴原 浩章
1
,
平野 由紀
1
,
山中 誠二
1
,
鈴木 達也
1
,
高見澤 聡
1
,
鈴木 光明
1
1自治医科大学産科婦人科
pp.1245-1251
発行日 2002年10月10日
Published Date 2002/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409904757
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はじめに
本邦における体外受精—胚移植(IVF-ET:in vitro fertilization-embryo transfer)による不妊症治療の適応は,卵管因子,男性因子,免疫因子および原因不明である.諸外国の一部において,AID不成功症例,排卵誘発不能症例,子宮の先天的あるいは後天的欠損症例などのために,第三者の配偶子や子宮の利川を前提とした適応が認められている現状とは,現時点では大きく異なる.
日本産科婦人科学会報告1)によると,本邦における平成11年分のIVF-ETなどの実施数は69,019周期,それによる出生児は11,929人であった.適応毎の治療周期数などは不明であるが,対象となる症例は年々増加の一途である.IVF-ETの絶対適応である再建不能の両側卵管閉塞や,IVFでは受精できず卵細胞質内精子注入法(ICSI:intracytoplasmic sperm injection)を要する重症男性不妊に対する移行時期に関しては,もはや議論の余地はない.ところがAIHの反復でも一定の妊娠成立が期待できる男性不妊,免疫性不妊,原因不明不妊に対するIVF-ETへの移行時期は,各施設の判断に委ねられている.したがってこの相対的なIVF-ET適応に対して存在する施設間の差を少なくすることは,多施設からの報告を集約するART実施に関する年次成績の信頼性向上につながる.
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