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はじめに
体外受精・胚移植(in-vitro fertilization-embryo transfer:以下,IVF-ET)がmicrosurgeryによっても再建不能な両側卵管閉塞,あるいは人工授精を試みても妊娠が成立しない男性不妊症,抗精子抗体による免疫性不妊症,および原因不明不妊症など,in vivoにおける不妊治療が限界に達したカップルに対し適用されて以来,すでに約30年が経過した.
その間には,受精卵の凍結保存法ならびに重症男性不妊症患者に対する卵細胞質内精子注入法(intracytoplasmic sperm injection:以下,ICSI)などによる治療成績も安定し,これらの技術は生殖補助医療(assisted reproductive technology:以下,ART)と称される.
最近のデータによると,本邦ではこれまでにARTによる累積出生児数は154,869人に及び,全出生児の約60人に1人はARTにより誕生するまで一般化している1).その一方で,ARTによる多胎妊娠の発生は年間3,784件にも上り,いまだ増加傾向にある1).
このARTによる多胎妊娠の発生を予防するためには,移植胚数をより少数に制限する治療方針が有効であることは明らかであるが,妊娠率の低下を伴うことをクライアント側は懸念する.しかしながら,移植せず残した胚は凍結保存により後日また移植を再計画でき,採卵当たりの着床率は低下するわけではない点の理解を求めることで,同意を得ることは困難ではない.
そこで本稿では,ARTによる多胎妊娠防止のための移植胚数の制限に関する現況を紹介するとともに,将来的にすべての移植周期で単一胚移植とすることが可能かについても言及する.
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