今月の臨床 産婦人科手術における合併症管理のすべて
IV 合併症への対応
4.大血管の損傷
今村 洋二
1
1関西医科大学胸部心臓血管外科
pp.549-553
発行日 2002年4月10日
Published Date 2002/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409904619
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はじめに
産婦人科手術における血管損傷は,横隔膜より両側鼠径靱帯の間,特に下腹部から骨盤腔内の後腹膜領域の動静脈損傷ということになろう.この範囲にある主要血管は,腹部大動脈とその分枝,下大静脈とそれへの流入静脈,そして腸管より肝臓に流入する門脈系に大別される.この領域の血管は,動静脈の分枝走行に奇形が多いことや,動静脈が並走することが多く,血管を損傷しないように注意することが大切である.また,骨盤腔内諸臓器間の血流は密接な関係にあり,この部位の大血管損傷は女性性器関係臓器のみでなく,泌尿器系臓器,消化器系臓器,そして臀部腰骨盤部を形成する筋肉への血行に影響を及ぼすことがあることも注意すべきである.
最近は,産婦人科領域の手術にも内視鏡下手術が導入されつつあるが1,2),通常の開腹術と同様の血管損傷が起こりうると思われる.内視鏡下手術中に大血管損傷を起こしたら,直ちに出血部の圧迫を行いつつ,通常の開腹術に移行させ,損傷の修復を行うべきであろう,それゆえ本稿では,通常の開腹術に伴う大血管損傷に対し,血管外科医がどう対処しているか,その基本的手技を中心に述べたい.
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