今月の臨床 子宮内膜症治療のストラテジー
各論
5.薬物療法
田坂 慶一
1
,
坂田 正博
1
,
田原 正浩
1
1大阪大学大学院産科学婦人科学
pp.1328-1333
発行日 2001年12月10日
Published Date 2001/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409904496
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はじめに
子宮内膜症の薬物療法について述べる前にその位置づけと全体像について述べておく.子宮内膜症は悪性の可能性は低いが,その治療において症状,妊孕性の確保,ホルモンの調節などのかかわりを持ち,診断手順においても治療手順を設定する場合でも,患者の目指すところ,症状に対する患者の認容性,効果の持続性,疾患の永続性などを考慮すると多様で複雑な選択枝の中で判断しなければならない疾患である.子宮内膜症の好発部位はダグラス窩腹膜,膀胱漿膜面,卵巣表面,卵巣実質,消化管表面,卵管,子宮表面などである.これらの部位における急性あるいは慢性的症状の主なものは下腹痛,不妊,付属器腫瘤である.一般に付属器腫瘤は外科的に治療され,病変の残存の程度により薬物療法が選択される.一方,下腹痛の場合は病状,症状の程度と治療水準の設定により外科的な局所治療あるいは卵巣の周期的ホルモン分泌を抑制する各種薬物療法が選択される.不妊を主訴とする場合は,その病変の広がり,病期によって,選択する治療法および各種薬物療法の順序が異なってくる.たとえば病期I,II期の場合,治療選択としてダナゾール,ブセレリンなどの薬物で卵巣機能を抑制するか,外科療法で病変を除去するか,積極的に過排卵処置(クロミフェン,hMG-hCG療法)による排卵誘発を行うか,生殖補助技術を用いるかの選択になる.
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