今月の臨床 遺伝子医療—現況と将来
出生前の遺伝子診断
2.羊水検査による診断 5)胎児風疹感染の遺伝子診断
種村 光代
1
1名古屋市立大学医学部産科婦人科学教室
pp.881-883
発行日 2001年8月10日
Published Date 2001/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409904396
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はじめに
近年の分子生物学の進歩はめざましく,DNA,ヒトゲノム,遺伝子医療といった言葉も身近なものとなってきた.臨床医療の現場にも遺伝子解析技術が導入され,その恩恵に与っているが,特に感染症の遺伝子診断はヒトゲノムの解析以上に一般化しつつある.
妊娠初期の母体感染症は,時として児に重篤な先天異常をもたらすため,母体の抗体測定が周産期のスクリーニング検査の一環として広く行われている.特に風疹については,1964〜65年の沖縄大流行,さらにその後の数年周期の全国的流行により,多くの先天異常児(先天性風疹症候群,con—genital rubella syndrome)が出生したため,日本では一般的にもよく知られている1,2).幸か不幸か,スクリーニングの結果として妊娠早期に胎児感染の可能性を知ることが可能となり,必要以上に人口妊娠中絶が選択される傾向にある.しかし,母体の感染イコール胎児感染ではない.そこで,1980年代の半ば頃より胎児血中の風疹特異的IgM抗体の検出による出生前診断が試みられるようになった.しかし,胎児の抗体産生能を考慮すると妊娠20週を過ぎなくては検査が行えない.
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