臨床メモ
風疹ワクチンと胎児感染
佐藤 直樹
1
1峯クリニック
pp.594
発行日 1982年8月10日
Published Date 1982/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409206664
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妊娠初期の風疹感染は,子宮内の胎児に風疹ウイルス感染を起し,そのため著明な奇形・先天異常をもって生れてくるものを特に先天性風疹児症候群(CRS)と呼んでいる。この胎内感染では,個体の免疫能が未発達のため,風疹ウイルスは生後もながく体内に残存し,水平伝染の感染源にもなりうるといわれている。
このような胎児の風疹感染やCRSの予防には,非妊時の風疹ワクチン接種以外に方法がない。我国でも1977年から女子中学生にも定期予防接種が実施されているが,それ以外の結婚妊娠する世代は産婦人科医での接種が必要である。しかしワクチンは弱毒化された生ワクチンであるから,ワクチンウイルス自体による催奇形性と胎児感染の問題がある。従って現在ではワクチン接種は妊娠では禁忌とされるのはもちろん,接種前1ケ月間と,接種2ケ後月間の避妊を確実に実行することが必要とされる。しかし,実地臨床ではすべての例でこれらの条件を満たすとは限らず,接種後すぐ妊娠してしまう例もあり,その取扱いが問題となる。しかし,ワクチンウイルスは臨床的にどの程度,胎児感染やCRS発生riskがあるのか不明の点が多い。
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