今月の臨床 一歩先行く超音波胎児検診
妊娠後期
4.子宮下節帝切瘢痕の評価
佐藤 章
1
,
柳田 薫
1
,
藤森 敬也
1
1福島県立医科大学医学部産科婦人科学
pp.630-633
発行日 2001年5月10日
Published Date 2001/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409904342
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はじめに
既往帝王切開術症例(以下,既往帝切例と略す)に対し,次の分娩は必ず帝切すべきであるといった1900年代初めの頃とは異なり,最近では試験分娩(trial of Iabor)を行って,経膣分娩させる試みがなされ,試験分娩を行った既往帝切例のうち,その約60〜80%は経膣分娩できること(vagi—nal birth after cesarean section:VBAC)が報告されるようになった.しかし,VBACの最も大きな問題は,分娩中の子宮破裂(uterine rupture)である.その頻度は1%未満と報告されていて,比較的頻度は少ないが子宮破裂を起こすと,母体はshock,子宮摘出など,また胎児は死亡または永久的な神経学的後遺症を残すことになり,重大な問題となる.したがって,VBACを施行するにあたっては,十分なインフォームド・コンセントが必要になる.既往帝切症例に対して,VBACの適応についての論文があるが,その中で現在の帝切の手技では子宮下節の横切開がほとんどであることから,超音波断層法による子宮下節の超音波像が,子宮破裂を予測できるのではないかという考えが起こってきた.しかし,超音波断層法による子宮下節帝切瘢痕の評価についての報告は現在までのところきわめて少ない.この理由の主なることは,子宮下節の厚さや性状について一定の判定基準を定めて,大きな無作為コントロール試験ができないためと考えられる.
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