今月の臨床 婦人科医のための乳癌検診
疫学と発生
4.遺伝性乳癌と婦人科領域の家族性腫瘍との関連について
佐川 正
1
1北海道大学医療技術短期大学部
pp.352-359
発行日 2001年4月10日
Published Date 2001/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409904294
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はじめに
乳癌の罹患率・死亡率は際立って増加しており,日本人女性の乳癌の年齢調整罹患率は1994年には38.0(人口10万人対)で胃癌と同率の1位であったが,1995年には39.8と遂に胃癌(37.9)を抜いて単独の1位となった.
生殖,環境因子,妊娠・月経周期の変化・ホルモン剤の服用などで影響される内分泌学的因子を含む多数の要因が乳癌発症のリスク因子として知られているが,乳癌の家族歴が最も強力なリスク因子であることが疫学的調査で報告されている.乳癌に遺伝的素因が存在することが欧米の疫学的研究により明らかにされており,実際に乳癌に罹患した女性の5〜10%が遺伝的素因によるとされている1,2).しかし,わが国では乳癌の罹患率が欧米諸国と比べて低いこと,少子化の影響による家系構成員数の減少などのさまざまな理由で,乳癌の遺伝性に関する十分な疫学調査は行われておらず,日本人女性における遺伝性乳癌の臨床的・分子生物学的特徴は十分に解明されていないのが現状である.
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