連載 Estrogen Series・44
ピルはほんとうに環境ホルモンか?
矢沢 珪二郎
1
1ハワイ大学
pp.1138-1139
発行日 2000年9月10日
Published Date 2000/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409904144
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ピルがようやく日本でも使用が認可されたとの最近の新聞報道で,ピルが環境ホルモンであることが懸念されることが記されていた.この点については,欧米ではすでに解決済みとされており,いまさらそれを蒸し返すものもいない.今回はそのへんの事情についてご報告したい.
エストロゲン物質による環境汚染は水系に広く分布する.たとえばエストロゲン作用を有する工業物質として代表的なAPE(alkylphenol—polyethoxylates)は毎年30万トン使用されるが,その60%は水系に分布すると推定されている1).ことの発端はある釣り人が雌雄同体の魚を見つけたことにあった.釣り上げた場所は下水処理場の放水路のすぐ下流であった.魚の雌雄同体はきわめて稀で,それ自体で症例報告となるぐらいである.ところが調べて見ると,下水処理場の放水路下流にいる魚の実に5%もに雌雄同体がみられたのである.
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