原著
卵巣境界悪性腫瘍Ⅰ期の臨床的病理組織学的特徴—卵巣癌Ⅰ期との違い
森川 守
1,3
,
山田 俊
1
,
津村 宣彦
1
,
山崎 綾野
1
,
武井 弥生
1
,
川口 勲
1
,
山口 潤
2
1北海道厚生連帯広厚生病院産婦人科
2北海道厚生連帯広厚生病院臨床病理科
3町立芽室病院産婦人科
pp.1311-1315
発行日 1999年10月10日
Published Date 1999/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409903810
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卵巣境界悪性腫瘍Ⅰ期について,その臨床的および病理組織学的特徴を検討した.当科で卵巣境界悪性腫瘍I期と診断された20例(LPM群)を対象とした.その際,当科で同期間に卵巣癌I期と診断された50例(ca群)と比較検討した.これら2群で,①年齢,②病理組織型,③腫瘍径,④開腹時細胞診,⑤開腹時腹水量,⑥腫瘍マーカー陽性率,⑦被膜破綻率,⑧予後,について比較したところ,群間に明らかな有意差はみられなかった.しかし,以下の特記すべき点を認めた.①年齢分布は,ca群では正規分布にほぼ従っているのに対し,LPM群では若年層と高齢層の2峰性を示した.②病理組織学的には,LPM群ではca群に比べて漿液性型,類内膜型が多く,ca群ではLPM群に比べて明細胞型が多く認められた,③腫瘍径,腫瘍マーカー,開腹時腹水量には,2群間で大きな差はなかった.④腫瘍被膜破綻例ならび開腹時腹水細胞診陽性例はLPM群では認められなかった,⑤LPM群ではca群より比較的予後がよかった.本研究では,「LPM群はca群の前癌病変ではなく,一線を画す腫瘍である可能性」が示唆された.また,腫瘍マーカーや開腹時所見からだけでは2群の鑑別はつかず,画像診断などでLPM群を疑う場合には事前に術中迅速病理診断や卵巣癌根治術の準備をすることが必要であると思われた.
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