今月の臨床 婦人科腫瘍境界悪性—最近の知見と取り扱いの実際
最近の知見
3.卵巣境界悪性病変
佐々木 寛
1
1東京慈恵会医科大学産婦人科
pp.1008-1014
発行日 1996年8月10日
Published Date 1996/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409902617
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卵巣表層上皮・間質性腫瘍の境界悪性腫瘍は,1929年Taylorにより提唱されて以来1),1971年にFIGOでlow potential malignancyとして定義され2),1972年にはWHOでborderline malig—nancyとして採用定義された3).わが国では,旧日産婦分類で中間群として取り扱われてきたが,1990年の新分類によりWHO分類に互換性をもたせる意味で境界悪性腫瘍として定義された4).
最近の遺伝子解析の報告によると,表層上皮性間質性境界悪性腫瘍においては,癌遺伝子,とくにKi-ras突然変異が確認されているが,抑制遺伝子p53などの突然変異はないことが報告されている5).一方,腺癌では癌遺伝子,抑制遺伝子とも突然変異が報告されており,境界悪性腫瘍は形態のみならず遺伝子の面からも,悪性腫瘍とは一線を画す腫瘍であることが判明しつつある.したがって,その取り扱いは,境界悪性腫瘍の特徴をよく理解したうえで行われる必要がある.
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