一口メモ
卵巣境界悪性腫瘍とその腹水細胞像
手島 伸一
1
1同愛記念病院病理
pp.1459
発行日 2000年10月30日
Published Date 2000/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542904603
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卵巣にはさまざまな悪性腫瘍が認められるが,頻度的には上皮性の悪性腫瘍,とりわけ漿液性嚢胞腺癌と粘液性嚢胞腺癌が多い.WHOやわが国の分類ではこれら嚢胞腺癌と良性の嚢胞腺腫との間に前癌病変あるいは非浸潤癌としての性格を示す境界悪性腫瘍(境界悪性の嚢胞腺腫)が定義されている.境界悪性腫瘍は良性と悪性の中間的な核分裂活性と核異型を有する.また腺細胞に核異型が認められる際に,明らかな浸潤像があれば腺癌,浸潤像が欠如していれば境界悪性腫瘍と定義されている.境界悪性腫瘍では,腹膜表面に播種状の増殖巣を伴うことがあるが,同部で破壊浸潤像を伴うことはまれであり,播種を伴っても予後が良好なことがわかってきた.卵巣境界悪性腫瘍が疑われる際の腹水細胞診で癌細胞を見つけた場合,それが境界悪性腫瘍の播種の細胞(すなわち予後良好)か真の癌細胞(予後不良)なのかの鑑別は極めて困難といわざるをえない.
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