今月の臨床 卵巣がんと闘うために
治療
4.境界悪性卵巣腫瘍の取り扱い—表層上皮性境界悪性腫瘍に関する問題点をふまえて
青木 大輔
1
,
小宮山 慎一
1
,
野澤 志朗
1
1慶應義塾大学医学部産婦人科
pp.834-837
発行日 1999年6月10日
Published Date 1999/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409903691
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境界悪性卵巣腫瘍(低悪性度卵巣腫瘍:LMP)の概念については,国際的には1971年にFIGOが“carcinoma of low-malignant potential”として取り上げ1),次いで1973年にWHOが組織学的診断基準を示すとともに“borderline malig—nancy”とよんだ2).一方,本邦では以前の旧分類が組織発生を考慮しておらず国際的な分類との間で混乱がみられたことから,1990年に日本産科婦人科学会と日本病理学会が共同で作成した卵巣腫瘍取扱い規約の中でこれまでの概念が整理され,これら一連の腫瘍は境界悪性borderline malig—nancy[低悪性度腫瘍tumour of low malignantpotential]として定義されている3).
現在,全表層上皮性卵巣腫瘍に占めるLMPの割合はおよそ14%程度といわれ4),臨床上遭遇する頻度はけっしてまれではない.その多くは漿液性腫瘍(serous LMP)もしくは粘液性腫瘍(mucinous LMP)である.LMPの臨床上の問題点として,診断基準,予後,適切な治療指針,化学療法の有用性などがあり5),これらを十分考慮したうえで治療法が選択されなければならない.そこで本稿ではLMPの現況を交え,その臨床的取り扱いにおける問題点についても述べてみたい.
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