今月の臨床 羊水
羊水異常の診断
4.絨毛膜羊膜炎の重症度診断
末原 則幸
1
1大阪府立母子保健総合医療センター産科
pp.1272-1274
発行日 1998年10月10日
Published Date 1998/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409903424
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
絨毛膜羊膜炎(chorioamnionitis)は卵膜(絨毛膜・羊膜)の炎症で,病理学的診断がなされ,組織学的重症度分類が用いられている.しかし臨床的には絨毛膜羊膜の炎症のみならず羊水や臍帯の炎症,さらに胎児の子宮内感染に至るまで幅広い概念で捉えられることが多い.すなわち,絨毛膜羊膜炎とは,腟・頸管における異常細菌の増殖,いわゆる細菌性腟症(bacterial vaginosis)から頸管炎となり,さらに上行し,絨毛膜炎,羊膜炎に波及し,羊水感染や胎児の感染に至ると考えられる.この絨毛膜羊膜炎は子宮の収縮を誘発し,早産に至ることが知られており,早産防止の観点から重要視されている.最近,ウイルソンミキティ症候群と絨毛膜羊膜炎の関連が報告されて,ウイルソンミキティ症候群の病因論の観点から注目を浴びている.
しかし,これらの病理学的診断は分娩後においてなされるものであって,臨床において妊婦を管理するうえでは,母体の発熱や頻脈といった臨床症状と白血球数やCRPといった血液中の感染マーカーの測定,さらには胎児の心拍数などを用いざるを得ない.これらの臨床的重症度は病理学的重症度とは必ずしも一致しないことが知られている.
Copyright © 1998, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.