今月の臨床 胎児・新生児のBrain Damage
胎児期の脳損傷
3.IUGRと脳障害
松井 潔
1
,
後藤 彰子
1
1神奈川県立こども医療センター周産期医療部新生児未熟児科
pp.1146-1152
発行日 1998年9月10日
Published Date 1998/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409903393
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周産期医療の進歩により新生児の生命予後は改善し,新たな課題は脳をまもる周産期管理の工夫と脳蘇生の治療の開発と考えられる.新生児神経学の進歩により神経学的後遺症をきたす病態は整理された.すなわち,未熟児では脳室周囲白質軟化症(PVL)(痙性両麻痺の原因)と脳室周囲出血(PVH)(下肢優位の片麻痺または左右差の強い両麻痺の原因)の2大疾患1),成熟児では低酸素性虚血性脳症(HIE)が脳性麻痺,てんかん,精神発達遅滞(major handicap)と強く関連する主要な周産期脳障害である.HIEは産科管理の進歩により減少した.したがって,HIEにおいては早期新生児脳症(neonatal encephalopathy)として広く捉え,基礎疾患の検索が治療と同時に行われなければならない.一方,言語発達遅滞,多動・注意欠損症候群,学習障害(minor handicap)2)は極低出生体重児に頻度が高いとされるが,病因は不明である.今後,周産期医療の進歩によりさらにmajorhandicapが減少すれば,minor handicapの重要性が増すと考えられる.
IUGRは従来胎内死亡,胎児仮死・新生児仮死,新生児期の合併症の頻度の高い疾患であったが,適切な周産期管理により短期的予後は改善したため,長期予後が議論されるようになってきている.
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