今月の臨床 サイトカインと産婦人科
妊娠とサイトカイン
1.胎児発育とサイトカイン
佐治 文隆
1
1大阪府立成人病センター婦人科
pp.1041-1043
発行日 1998年8月10日
Published Date 1998/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409903365
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胎児—母体系におけるサイトカイン産生
サイトカインは血球系や免疫系だけでなく,神経系や内分泌系も含めた幅広い細胞群において産生され,作用することが知られている.生殖過程においても,受精卵の着床,胎児形成,妊娠の維持,陣痛発来などに,各種サイトカインが深く関与することが明らかになってきている.妊娠維持や胎児発育に不可欠な胎盤や子宮(脱落膜)から各種サイトカインが産生されることは,ヒトやマウスで明らかにされており(表1),SCF(stemcell factor)やLIF (leukemia inhibltory factor)を欠損する動物では,それぞれ胎児形成が障害を受けたり,初期胚の着床が阻害される1-3).
胎児発育の阻害,すなわち子宮内胎児発育不全(IUGR)の原因としては,先天奇形,喫煙をはじめ種々の因子が含まれるが原因不明のものも多い.これらのなかには胎児—母体系(feto-mater—nal unit)におけるサイトカインが,直接あるいは間接に作用してIUGRを惹起するものがあると考えられる.
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