今月の臨床 サイトカインと産婦人科
サイトカインの生物学
1.サイトカインの生理学
中野 昌康
1
,
切替 照雄
1
,
幸村 康弘
2
1自治医科大学微生物学
2自治医科大学産婦人科
pp.1014-1019
発行日 1998年8月10日
Published Date 1998/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409903358
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サイトカインの概念と特徴1)
生体内の種々の細胞,とくにTリンパ球,白血球,単球,マクロファージや血管内皮細胞,線維芽細胞などは刺激に応答して,極微量で作用するさまざまな蛋白活性液性因子を産生する.それらの因子はサイトカイン(cytokine)と総称されている.それらのサイトカインは生体内でネットワークを形成して細胞の分化・成熟,生体防御機構や免疫の成立,炎症や免疫応答の増幅・抑制・調節,持続をコントロールしている.多くのサイトカインは刺激のない正常な状態ではほとんど産生されないか,産生されてもごく微量であるが,刺激に応じてある特定のサイトカインは大量に産生される.サイトカインの働きは複雑で,生理範囲をこえて産生されると生体に傷害を与える場合もある.
現在,遺伝子がクローン化されてその蛋白構造や活性性状が明らかにされたもののみがサイトカインとして認められ,すでに多数のサイトカインが知られており(表1),それぞれに特性をもっている(表2).それらの多くは免疫応答や炎症に関連して発見された.産婦人科領域でも,妊娠,出産などの生理現象のみならず,早産,流産,各種疾患の病態生理に関係することが明らかにされつつある.
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