グラフ 産婦人科とCT・7
子宮体癌
鈴木 正彦
1
,
高橋 康一
1
Masahiko Suzuki
1
,
Koichi Takahashi
1
1杏林大学医学部産婦人科教室
pp.436-438
発行日 1987年7月10日
Published Date 1987/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409207611
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子宮体癌組織はcontrast enhancement (CE)後の子宮陰影内におけるlow density area (LDA)として描出されるため,CTによれば癌組織と正常子宮筋層を識別することができる。子宮体癌の予後は組織型など多くの因子によって規定されるが,癌の子宮筋層内浸潤の深さは,その子宮外蔓延の頻度と密接な関係を有しており,CTでこれを治療開始前に明らかにしうることの臨床上の意義は大きい。すなわち癌組織を示すLDAが小さく,正常子宮筋層が厚く厚さが一定の症例では,癌の子宮筋層内浸潤が軽度で,子宮外に癌が広がっている可能性は小さいと考えられるのに対し,子宮陰影内のLDAが大きく,正常子宮筋層が薄かったり,その厚さが不均一であったりするものは,癌の筋層内浸潤が深く,癌がすでに子宮外へ広がっている可能性が大きいと考えられ,このような所見の差は手術術式をはじめとした治療法の決定に大きな意味を持つものと言える(図1,2)。
子宮体癌の頸管侵入の有無はdifferential curettageによって決定されるが,頸管に侵入した体癌組織も,体部同様,子宮頸部陰影内のLDAとして描出されるため,CTによれば癌が頸管上皮に留まっているのか,頸部筋層に深く浸潤しているのかの鑑別が可能であり,II期の症例において一般に行われる広汎全摘のradicalityを決定する上での参考になるなど,その臨床上の意義はけっして小さくない(図3,4)。
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