今月の臨床 婦人科がんの化学療法—われわれはこうしいる
卵巣癌に対するNeoadjuvant Chemotherapy
波多江 正紀
1
,
和田 俊朗
1
,
大西 義孝
1
,
中村 俊昭
1
,
山本 文子
1
1鹿児島市立病院産婦人科
pp.712-717
発行日 1997年7月10日
Published Date 1997/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409902973
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抗癌剤の進歩とともに,多数の固形腫瘍に対する集学的治療の在り方に少しずつ変化が見られるようになってきているものがある.それらの主なる原因は,抗癌剤の併用療法や,新しい細胞レベルでの薬理作用をもった新薬の臨床導入によるところが多く,さらにこれらの優れた化学療法の支持療法の進歩がcomplianceを上げ,二次的に抗腫瘍効果を押し上げている可能性も否定できない.
過去25年間に,絨毛癌は85%治癒可能な腫瘍の範疇に入り,卵巣癌は一部完治可能な範疇の腫瘍の地位を獲得するに至った.最近の分類では卵巣癌に対する抗癌剤のカテゴリーは,乳癌,喉頭癌などと同ランキングに属している.しかし同一のカテゴリーのなかでも3者の臨床奏効率には微妙に差が見られ,neoadjuvant chemotherapyと組み合わされた手術の長期的予後改善へ評価がなされている.換言すれば,60〜70%の奏効率を有するがゆえに手術と化学療法のそれぞれの利点で補い合っての治療が必要になるといえよう.30%前後の奏効率であればSLOもsecondary cytore—ductionの意義も,second lineという救済的措置も存在しない.90%程度の奏効率であれば化学療法の比重はさらに高く,術前化学療法は一定の条件が満たされる患者には標準的手法として定着すると思われる.
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