連載 産婦人科クリニカルテクニック
ワンポイントレッスン—私のノウハウ
2本の補助牽引糸により抜糸を容易にした頸管縫縮術の一工夫
有澤 正義
1
,
持丸 文雄
1
1平塚市民病院産婦人科
pp.85
発行日 1997年1月10日
Published Date 1997/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409902811
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頸管縫縮術は,内子宮口に近い位置で結紮するほど有効であり,マクドナルド法よりも,膀胱を剥離して,高い位置で結紮手技を行うシロッカー法のほうが有効とされている.しかし,高い位置で結紮するシロッカー法では,抜糸がそれだけ困難になるという欠点を有していることは,シロッカー手術の経験を持つ術者なら誰しも気づいている点である.筆者らは縫縮糸に補助牽引糸を2本取り付けることにより,その切断をスムーズに行える方法を考案した.本術式では,まず膀胱を子宮前面より十分に剥離して,頸管後面より2重の3号ナイロン糸を頸管左側の腟粘膜下に通し,頸管前面の膀胱剥離部の左寄りに貫通させる.貫通後,ナイロン糸を同様に頸管右側の粘膜下に,左側と対称の位置に上から下へと貫通させ,2重のナイロン糸によって頸管を一周させる.次にすぐナイロン糸を子宮後面で結ばず,補助牽引糸の取り付けにかかる.膀胱剥離部の2重ナイロン糸の下に補助牽引糸用にナイロン糸を2本左右に分けて通す.補助牽引糸は縫縮糸に強く固定させてしまうと,抜糸時に縫縮糸の引き抜きが困難となるので鉗子を当てて,余裕をつくりながら結紮する.はじめに,あらかじめ補助牽引糸を作製しておいて,縫縮糸を貫通させる過程で取り付けてもよい.牽引糸と縫縮糸が強く固定されないことがポイントとなる.取り付けた牽引糸は子宮前壁の膀胱を剥離した切開部の左右両端にそれぞれ置く.
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