連載 産婦人科クリニカルテクニック
ワンポイントレッスン—私のノウハウ
腹部大動脈周囲リンパ節郭清の留意点
風戸 貞之
1
,
石塚 隆夫
1
1名古屋第一赤十字病院産婦人科
pp.84
発行日 1997年1月10日
Published Date 1997/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409902810
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腹部大動脈周囲リンパ節の郭清は,卵巣癌,子宮体癌の基本術式に組み込まれるようになってきた.これは腹部大動脈周囲リンパ節の状態が,卵巣癌,子宮体癌の予後を左右することが明らかになってきたためと考えられる.今回,筆者らの行っている腹部大動脈周囲リンパ節郭清の術式を紹介するとともに,その術式の留意点について述べたい.通常,骨盤内の操作が終了した後に腹部大動脈周囲リンパ節郭清に移るが,この時点で腹部切開創を剣状突起下まで拡大している.十分な視野を確保するためである.その後,下行結腸および上行結腸外側の後腹膜を上方に切開する.この結腸を中央上方に圧排することにより大動脈および下大動脈周囲の結合織が現れ,リンパ節が触診・視診できるようになる(図).小腸をアイソレーションバッグに収納し腹腔外に出した後,両側の卵巣血管を上方に剥離しできるだけ上方で結紮切断する.リンパ節郭清の範囲は腎静脈より下部のレベルまでとしている.卵巣血管を上方に剥離することにより左卵巣静脈が左腎静脈より分岐する位置を確認でき郭清のレベルを決定できる.卵巣血管を剥離する際には尿管の損傷に注意する必要がある.リンパ節郭清は血管より周囲組織を剥離するつもりで行う.その際,キューサーを使用すると比較的安全に行える.腰動脈,腰静脈,左右の総腸骨動脈の分岐部より5cmぐらい上方の大動脈より分岐する下腸間膜動脈にとくに注意する必要がある.
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