今月の臨床 ホルモン療法—新しい動向を探る
ホルモン療法のポイント
1.性早熟症
立花 克彦
1
,
諏訪 珹三
1
1神奈川県立こども医療センター内分泌代謝科
pp.1275-1277
発行日 1996年10月10日
Published Date 1996/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409902685
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中枢性性早熟症とは,何らかの原因で視床下部—下垂体—性腺系が早期に成熟し,思春期にみられる身体的変化(2次性徴)が異常に早期1)にみられる疾患である.本症の臨床的問題点として,①脳腫瘍などの生命にかかわる原因病変が存在する可能性があること,②2次性徴が年齢不相応に早期に進行することによる日常生活上の問題,③早期に成長が停止することによる最終身長の低下,が挙げられる.これらの問題点のうち,②と③に対して2次性徴抑制療法が行われる.したがって,厚生省研究班による診断の手引き2)などによって本症と診断されても,2次性徴の早発が日常生活上問題とはならず,またすでに最終身長に達してしまっている場合や,ある程度の身長に達しており,最終身長も極端に低くはならないと考えられるような症例では,2次性徴抑制療法は必ずしも必要ではない.反対に2次性徴の発来が年齢的には正常範囲であると考えられても,それが日常生活上問題になる場合や,いまだ身長が低くて最終身長が極端に低くなってしまうと予測される症例(「相対的性早熟」とでも呼ぶべき状態)では,2次性徴抑制を考慮しなければならないこともある.
2次性徴の発来自体は正常な現象であり,それを抑制することにはさまざまな問題もないわけではない.したがって2次性徴抑制療法の開始に当たっては,治療によるメリットとさまざまなデメリット(の可能性)を考慮して慎重に決定する必要がある.
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